読書記録:Harvard Business Review 2018年8月号

ついに自己紹介以外ではじめての記事ということで、一発目はかの有名な「ハーバードビジネスレビュー」の読書記録とします!

この書籍は毎月ダイヤモンド社が発行している雑誌で、特定のテーマ(今月号でいえば「従業員満足は戦略である」)に沿って様々な研究者や企業経営者などの論文やインタビューを掲載しているものです。

 

 

本家?はあのHBSの機関誌というだけあり、単なる机上の空論にとどまらず、現代の企業が抱える問題点に対する処方箋を提示するような実学的な内容になっています。

論文もわかりやすく噛み砕いてますし、訳もこなれていて読みやすいので、ビジネスマンの方はぜひ一度手に取って読んでみてください

(僕はかつて調子に乗ってHBR読むなら原著でしょ!と英語版を読んでいましたが、読むのが辛いのと、日本語版には独自の記事やインタビュー(今回で言えばファミマの澤田さんなど)があることから、現在では日本語版に落ち着いています。)

 

それでは前置きが長くなりましたが、以下読書記録の本編です。

今月の特集は先ほども少し触れましたが「従業員満足は戦略である」です。昨今はES(Employee Satisfaction)といった言葉も注目されていることもあり、最初はそこまで新しいテーマではないのでは?と思いました。

しかし今回の特集で対象としていたのは小売および流通といった業種である点が非常に興味深く、雑誌を購入しました。

小売業は一般的には、典型的な薄利多売型・低付加価値型のビジネスモデル(=粗利が小さく、人件費などの固定費を抑えるのが定石。コンビニとかファストフードの店員さんの大半はバイトで賄われてますよね?)であるため、利益の確保と従業員満足をどう両立させるのか?という疑問が浮かんだのです。

 

その疑問に対する回答の結論をいうと「競争環境の変化が訪れており、企業は顧客に対して自社で買ってもらうための理由(差別化)が必要。そのためには職場を「よい職場(Good Jobs)」に移行させることで、従業員のモチベーションを高く保ち、彼らに顧客に対して優れたサービスを提供してもらうことが重要である」ということでした。

ざっくりいうと、

ES(従業員満足)の実現→CS(顧客満足)の実現→好業績の実現

という流れを作ろうよということであり、好業績を実現すればボーナスの支払い等を通じて更にESを高める余地が生まれるという好循環も期待できますよということですね。

本文では更にスペインのスーパー、Walmart、ファミマといった様々な企業の事例やそのマネジメントのインタビューを通じて「よい職場」の実現のための施策と移行に際しての失敗例を紹介しています。

様々な人が色々なことを言っているのですが、「よい職場」戦略の提唱者であるZeynep Tonさんが仰っているよい職場の4条件を簡単に以下にまとめています。

① 業務の簡略化

② 業務量の標準化と現場への権限委譲

③ オーナーシップの醸成と複数領域の業務対応のためのトレーニング

④ バッファーを持った業務配分

どうですか?皆さんの職場では4条件がどれだけ満たされていますか?
Zeynepさんはよい職場戦略について"Not specific to retail"とおっしゃっていますので、小売業以外の方も例外ではありません。

面白そうだな~と思った人はZeynep Tonさんの本や論文などをご覧になっていただくといいと思います。TEDやMITのインタビュー動画なんかもネットに転がっています。

 

 

最後に今回の特集の感想というか雑感です。

個人的によい職場戦略の素晴らしさに異論はないのですが、CS→利益が増えるという繋がりについての説明が不足しているのでは?と思いました。

上記の4条件やほかの経営者の方が仰っていた戦略を本当に実現しようとすると相当な追加コスト(含む固定費である従業員の給与増)がかかると推察されます。

その追加コストに見合うだけの売り上げが本当に増えるのか?この疑問の掘り下げがなく、やや納得感に欠けたというのが本音です。

高級ホテルやレストラン、ブランドショップならいざ知らず、コンビニやスーパーに皆さんどこまで優れたサービスを求めていますか?

確かにECへの対抗にはサービス部分の付加価値提供がキーとなりうると思いますが、従業員の給料を増やしてモチベーションを高めたら、従業員が顧客満足のために主体的に考えて動くから売れるんだ!というのはあまりに単純すぎると思うのは私だけ?

この辺はもう少し継続して考える・調べてみる余地はありそうです。。。

 

長くなりましたが、それでは~